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クラッシュ(小説) [本]

J.G.バラード 著  柳下毅一郎 訳
創元SF文庫

実は、創元SF文庫のシリーズ読むの初めてでした。
これはデヴィッド・クローネンバーグの映画も有名で、わたしはまだ見ていないんですが 気になっている作品の1つでした。

主人公バラード(!)は、冒頭である人物の事故死のことを知ります。
その人物はバラードと深く関わり、彼とその妻、キャサリンの人生に大きな影響を与えた・・・ヴォーンは、異常なまでの交通事故愛好者。
バラード自身がスリップ事故で1人の男性を死なせ、その妻ヘレンに怪我をさせたときから、彼とヴォーンとの奇妙な関係が始まります・・・。

バラードとヴォーンは、警察無線を盗聴し、事故が発生したという情報を知るとその現場に向かい、写真を取り・・・。
ヴォーンは事故を見た後はかなり性的興奮を覚えるようで、娼婦達に事故の被害者と同じポーズをとらせたりします。
彼らとその妻、そしてヘレンやその他諸々と執拗なまでのセックス描写と自動車事故が、いろんな意味で絡み合ってすごく濃いです。

文体というか言い回しも「金属的快感がほとばしり・・・」とか、なんとなく難しくて硬質な感じで、独特の雰囲気を持っていますね。
まぁこの難解さのせいもあって、最後まで読んだあとはちょっとグッタリしちゃいましたが・・・。

SFって一般的なイメージって、UFOやサイボーグが出て来たり23世紀だったり、そういう未来っぽい世界って感じですよね。
でもこの作品はそういう訳じゃなく、時代や場所は今自分たちがいる所と同じなんですが、それだからこそこの妙な違和感、異様な感じというのが際立つんですかね。
ちょっとあり得ないような・・・でも妙にリアリティあるようなっていうバランスが何ともいえず、これがバラードの人気のゆえんかもしれませんね。

あとがきで翻訳の柳下毅一郎さんも書いていますが、これを見たら、テレビでよく見る「交通事故シミュレーション」とかが「バラード的」となんとなく思うようになって来ますね。
1973年の作品で、既に35年も経過していますが、今でもこれだけの影響力を持つ作品はすごいと思います。

クローネンバーグの映画も気になってきますね。
電車で読むのが恥ずかしくなる位のセックス描写をどれだけ映像に出来たのか・・・とか。
またバラードの他の作品も、やっぱり「今ある世界のなかの異常」的な題材が多そうなので、ちょっと読んでみたくなりました。


クラッシュ (創元SF文庫 ハ 2-11)

クラッシュ (創元SF文庫 ハ 2-11)

  • 作者: J.G.バラード
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/03/24
  • メディア: 文庫



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コメント 4

coco030705

こんにちは。
この映画、見ました。これはかなり前の朝日ベストテン映画祭(大阪ローカルな映画祭)でベストテンに選ばれていて、友だちに切符をもらっていきました。まさか、こんなに風変わりな映画とは思わなかったので、びっくりした記憶があります。とにかく交通事故愛好者なので、みんながどこか怪我していたり、義足で松葉杖ついていたりとか、すごく変わった感じでしたよ。
小説では性描写がすごいとのことですが、映画はそれほどでもなかったと
思います。トミュウさんは興味がありそうなので、ぜひごらんになってくださいませ~☆
by coco030705 (2008-06-22 19:44) 

トミュウ

> ココさま
こんばんわ!
nice!とコメントありがとうございます〜。

映画見たんですね。
確かに登場人物は皆事故で体のどこかに怪我があったりするんですよね。
いずれ見てみようと思います〜。

これがベストテンにランクインするなんて、なかなか良い映画祭ですね!


by トミュウ (2008-06-22 21:06) 

coco030705

「朝日ベストテン映画祭」は朝日新聞と朝日放送が主催なんですって。(知らなかった。)このタイトルで検索したら、すぐヒットしますよ。覗いてみてください。ラインナップがミニシアター系のいい映画がズラーリですよ。私は今年はこれで「パンズ・ラビリンス」を見ました。
by coco030705 (2008-06-23 15:39) 

トミュウ

> ココさま

早速調べてみました〜。
歴史のある映画祭なんですね。
なかなか良い作品が選ばれますし。
こういうのがきっかけになって新しい映画を知る機会が増えるのって、すごく良いなぁと思います。


by トミュウ (2008-06-24 23:53) 

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