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「川の底からこんにちは」 を見てきました。 [映画:カ行]

2009年 日本
監督 石井裕也

ぴあフィルムフェスティバル(PFF)スカラシップ出身の監督は、最近では「ハッピーフライト」の矢口文靖監督、「フラガール」の李相日監督など、活躍している人が多いという印象がありますね。
その第19回のスカラシップ作品がこちらです。
正直そういう情報よりも、予告のインパクトが強くて見に行こうと思った作品です。

主人公佐和子は東京でOLをしていますが、今の仕事もまぁどうでもいいし、つきあっている彼氏(バツイチ子持ち&社内恋愛)にもそんなに期待していることはない・・・という、人生について何となく諦め感のようなものを持っている女の子です。
どんなことに対しても「しょーがない」が口癖で、あまり積極的に自分のことを分かってもらおうとすることがない彼女ですが、病気で父親が倒れたことをきっかけに、故郷に帰ってしじみのパッキング工場を継ぐことになります。

実は佐和子には駆け落ち同然で故郷を出て行った過去があり、本気で戻りたくなかったんですが、早速彼氏の健一が仕事を辞めて「一緒に行く」と言い出したり、なんとなく流されて結局健一の娘の加代子と3人で実家に帰ってくることに。
工場では、駆け落ちして出て行った娘が今更帰って来てなんだと言わんばかりに、工場で働くおばさん達からは非難ごうごう、まさに逆境の状態です。
はじめは説明するのも面倒だし、いろいろどうでもいいやと思っていた佐和子ですが、工場の売り上げが落ちて、もう来月まで持つか持たないかという状況をなんとかしなければ・・・といろいろと考えはじめることにします。

それぞれのキャラクターが本当に生き生きとしています!
佐和子も、いかにもモノゴトを諦めちゃってますという雰囲気のOLだったのが、父親や叔父さんと接して行くうちに変わって行く姿が非常に良いですね。
おばさん達の強烈キャラクターは言うまでもなく、もうほんとにダメ君の新一、全然佐和子に心を開こうとしない加代子とか、登場人物達も皆佐和子の変化に伴って少しずつ変わって行きます。

この作品を観ていると、何かを伝えようと思う時、それを伝えないと本当に何も分かってもらえないんだなというのが分かる気がします。
何もかもしょーがないと思っていた佐和子は、自分のことを伝えようとせず、それだからこそおばさん達にも誤解されて、あることないこと大騒ぎされます。
そういう事態に結局は耐えきれず、最終的にはキレるような形で佐和子は皆に話をするんですね。
自分に都合の悪いことでも、今はどう思っているのかというのを正直に熱く語ることによって、おばさん達は彼女の本当の姿を知って、そんな彼女と一緒に頑張ろうと思うことになる訳で。
工場服を着て、皆で作った社歌を目を見開いてノリノリで歌う皆の姿に、笑いもするけど胸が熱くなるような感覚もありました。

加代子の場合でも同じで、子供扱いせずちゃんと向き合って話をするようになったら、加代子はちゃんと佐和子のことを分かってくれた訳です。
そういうのって表面的なつながりじゃないんだよな〜と実感しました。

この映画で初めて主演の満島ひかりを見たんですが、本当に良いですね。
前半のあまり感情がなさそうな感じから一転、心から魂の叫びを訴え、そしてちょっとしんみりする所なんかも・・・変に不自然な感じがなくて素晴らしいと思いました。
新一役の遠藤雅もなかなかいい感じでしたし、絶妙な脂ギッシュさ抜群の若松了もかなり良かったです。

個人的にはあまり「頑張れ!頑張らなきゃ!」と言葉にして連呼するのはあまり好きではないので、そこだけは若干引っかかりましたが、佐和子や工場の皆の姿を見ているとパワーをもらえたというのは事実です。
そして・・・男って本当に誘惑に弱いのね、女はやっぱり強いのね・・・という部分も微笑ましくて、期待以上に良い映画を見せてもらえたと思いました。

前述のようにPFFスカラシップ監督はこれからも非常に活躍が期待されるので、今後の作品も注目して行きたいと思います。

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