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いつか王子駅で [本]

堀江敏幸 著
新潮文庫

堀江氏は好きな作家の1人で、エッセイなどは時々読んでいるのですが、今回初の長編小説ということで、とても楽しみに読みました。

主人公は 時々大学で教えたり、翻訳などをしている「私」で、??線沿いにある古くてガッチリしたアパートに住んでいます。
その主人公がいろいろ考えたり、行動したりすることが描かれるのですが、持ち前の流れるような文章とちょくちょく脱線する感じは、エッセイの印象そのままです。
一つのことを考えていて、「そういえば・・・」などといいつつ また他の考えに「脱線」してしまうあたりなど、きっと堀江氏の思考そのものなんだろうなと思ったりします。

この小説にはたくさんの本や文章が出てきます。
わたしが読んだことがあるような本はあまりなかったんですが、本の内容についての記述が詳細で分かりやすくて本当に感動しました。
文筆家ってこういう風に本の感想を書くのか!という感激と同時に、そのほんの少しでも、自分の書いている・・・文章とは言えないシロモノにも取り入れることが出来たらなぁ〜・・・などと、多少おこがましいことを考えたりもしたのでした。

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ピアソラ、自身を語る [本]

ナタリオ・ゴリン 著  斉藤充正 訳
河出書房

アルゼンチンタンゴ、バンドネオンといえば真っ先に思い浮かぶのはアストル・ピアソラですよね。
映画などでもよく使われているため、CDも何枚か持っていたりするのですが、惜しくも1992年に亡くなってしまいましたが、この本はその直前に彼が語った言葉などが主になっています。

著者であるナタリオ・ゴリンがピアソラの自宅でインタビューを実施する、という所からこの本は始まります。
ピアソラは最初にバンドネオンを持ったとき、初めて自分のバンドを結成したとき、そしてあまりお客さんもいないようなバーで演奏をしていたときのことなどの回想が語られます。

当時は特にアルゼンチンでは認められず、結構いい歳になるまで生活が苦しかった、という話が衝撃でしたね。
天才と呼ばれる人達にはそういう風に「時代がついて来れなかった」的な人も多いですが、ピアソラもその一人だったんですね〜。
ただ、そういう境遇にあっても、彼は「自分の音楽は誰にもまねができない」という確固たる信念を持って進んでいきます。

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シネマの記憶喪失 [本]

阿部和重+中原昌也 著
文芸春秋

阿部和重氏と中原昌也氏、2人とも好きな作家です。
シネフィルとしても有名なお二方の対談、「文學界」での連載をギュギュッとまとめた単行本です。
スピルバーグからウディ・アレン、そしてジョージ・A・ロメロから北野武まで・・・彼らならではのセレクションと、超シネフィル的視点&おもしろ話で読みどころ満載でした。

2人の「良い」という評価に結構影響されやすいこともあって、この本で言及されていた映画の約半分ぐらいは見ていました。読んでから見た映画もあったりします。
内容が分かって読むと、2人が言っていることもイメージしやすくていいですね。
でもわたしがぽんやり〜と見ていた部分などについて、自分では思いもよらない解釈がされていたり、他の映画との詳細な比較検証などがされていたり、本当にものすごく「深い」です。
「このシーンはなになにのこの部分へのオマージュだよね」なんていうことが即座に思い起こされるほど、たくさんの映画を見て、しかもシッカリ覚えているのには尊敬です。
見たことさえも忘れてしまう自分、なんて中途半端に見ているんだ〜!と反省したくなるほどです。

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凍える牙 [本]

乃南アサ 著
新潮文庫

以前時代推理モノを勧めてくれた父親が「これも面白い」と言っていた本です。
直木賞受賞作だったんですね、もちろん作者のことは知っていましたが、作品とかはあまりよく知らなかったですねぇ。

深夜のファミレスで突然「人体から発火する」という事件が発生します。
そこに第一報を聞いて駆けつけてきた中年の刑事滝沢、特別捜査本部に入った機捜隊の女刑事貴子がコンビを組んで捜査を実施することになります。
しかし、滝沢は「ここは女の職場じゃない」と言わんばかりの態度、対する貴子も「こういう男が最も好かない」と、初対面から反発し合う2人。
まぁここは、最終的にはある程度心を通わせるようになるんだろうな〜と思いつつ読んでいましたが。

火事の被害者の足に、すごく大型の犬に噛まれたような痕があるとことが判明し、それまで現場の聞き込みに回っていた貴子達はその犬の捜査を実施することになります。
そして知ったのが、オオカミと犬を掛け合わせた「ウルフドッグ」という動物のこと。
忠誠心が厚く、そしてものすごく賢く崇高な雰囲気さえ漂わせるウルフドッグに思いを馳せながら、その犬に喉元を食いちぎられるという被害者が続出し、捜査がどんどん大変になっていきます。

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邪魅の雫 [本]

京極夏彦 著
講談社新書

映画化第2弾が決定したという噂の、京極堂シリーズ最新作です。
今回の事件は、真壁恵という女性が自宅で殺害された事件を発端に、次々と謎の殺人事件が発生します。
全く関連がなさそうなそれぞれの事件は、現場には知らされないまま「連続殺人事件」として捜査が始まります。
もともとはこの件とは別の事件の捜査に携っていた青木君も、この中に入っていくことになる訳です。

そうして、今回の体力勝負係(?)益田君は、榎木津の親戚から、上司榎木津の身辺を探るようにと依頼されます。
成立直前になって、彼の縁談が断られるケースが何件も発生しているとのこと。
2人とも京極堂こと中禅寺に話を聞きに行き、多くのアドバイスと更に多くのウンチクをもらった後、それぞれの調査を開始するわけです。
益田君は、榎木津とは付き合いの古い関口君と一緒に行動を開始します。

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東京大学のアルバート・アイラー(赤) [本]

東大ジャズ講義録・キーワード編
菊地成孔・大谷能生 著
メディア総合研究所

前作(?)「歴史編」に続く、東大で2004年度後期に実施された菊地・大谷両氏による講義録です。
後期では毎月テーマを決め、それについて「歴史編」よりもより突っ込んだ内容についての講義があり、最終日に関連分野での第一人者がゲストに来て、講義&質問にて1テーマを終了、という形式で行われたようです。
それぞれの月のテーマはこのようになっています。
・ブルース(飯野友幸氏)
・ダンス(野田努氏)
・即興(大谷良英氏)
・カウンター/ポスト・バークリー(濱瀬元彦氏)

歴史をだだーっと追っていく青アイラーと比較すると、もっと実学的というか、音に関する話が出てくることが多くて、実際に音を鳴らすとよりよく分かるんだろうな〜と思いながら読んでいました。

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ワイルド・ソウル [本]

垣根涼介 著
幻冬社文庫

「昔は難しい本もいろいろ読んだけど,最近はエンタテイメント性の高い本の方が面白い」と熱く語りながら,父親が勧めてくれました。

最初の舞台はブラジル、アマゾンから・・・。
主人公の1人、衛藤は、戦後の移民政策によってブラジルにやって来ました。
「ブラジルで農業をやれば必ず財を成すことができる」との説明を受けたのに、連れて来られたのは家も、開墾された土地もないアマゾンの奥地でした・・・。
一緒に来た家族達も、自分の妻や弟も病気で続々となくなって行き、ある時衛藤はこの土地を出るのですが、それからも大変な苦労の連続。
残して来た家族達を迎えに行った時には、もう残っていた家族は誰一人残っていませんでした。
が、そこには残っていた家族、衛藤にとっては恩人でもあった野口の息子、かつ主人公の2人目、ケイがいました。

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目白雑録(ひびのあれこれ)2 [本]

金井美恵子 著
朝日新聞社

『一冊の本』たる雑誌で連載されているエッセイの単行本化で、名前の通り「1」があります。
でも、いきなり「2」を読んでも全く問題ないし、事実わたしも「1」を読まないままこの本を手に取りました。

著者が日々思っていることとかがもろもろ綴られていくのですが、なんともいえない辛辣な物言いに嬉しくなってしまいます。
力強いというか、さばさばした文章なので思わずくすくす笑いながら読んでしまいます。
内容は多岐にわたっていて、文学に対するものはもちろん、政治に関する批評やサッカー(ヨーロッパサッカーのファンなんですね!)の話も少なくない数出てきます。
やはり、文章って誉めるよりは批判の方が難しいと思うんですよ。それだけの自信も必要でしょうし、自信のためにはそれだけ知識の裏付けが必要ですから。
そういう意味では、金井氏の知識は多いのはもちろんですが、結構幅が広いのに恐れ入ります。
若い作家の文章について言及している部分などもありますが、もちろん読まなければ書くことはできないわけで、なんというか自分の言葉に責任を持っているという感じがすごくしました。

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東京大学のアルバート・アイラー(青) [本]

東大ジャズ講義録・歴史編
菊地成孔・大谷能生 著
メディア総合研究所

『官能と憂鬱を教えた学校』に続いて、菊地・大谷氏の講義シリーズと位置づけられるこの本。
なんと東大教養学部で講義されていたんですね!
わたしも「モグリ」で行ってみたかった・・・。

さて毎回「東大生の方〜?モグリの方〜?」(モグリの方の方が相当多いらしい)から始まるこの講義録。
1950年代頃誕生し、バークリー・メソッドやMIDIの登場を経由して2000年代に至るまでの発展やもろもろの歴史についての講義を全10回に渡ってされています。
ジャズは時々聴くぐらいで、あまり詳しい用語などは知らなかったのですが、話したことの採録でするすると読みやすいこともあり、そういった部分についてかなり知ることが出来ました。
「ビバップ」の発生や衰退、「モダン」と「プレ・モダン」などなど・・・。

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小説「ダ・ヴィンチ・コード」 [本]

ダン・ブラウン 著 / 越前敏弥  訳
角川文庫

いわずと知れた大ヒット作ですね。
作品自体は映画の予告で知ったという感じで、それほど興味があったわけではなかったんですが、ちょうど映画公開直前のテレビ番組に影響を受けてしまいまして・・・。
こういったクチの方々は沢山いたはずです。

映画予告の映像から入ってしまったためか、主役2人はどう振払ってもトム・ハンクス&オドレイ・トトゥにしか見えない・・・。
ソフィーの意志が強そうなきりっとした感じは、オドレイ・トトゥに結構近かったように思います。
1セクションが短く、また場面も主観も交代で変わるので、それも推進力としてどんどん読めてしまいますね。次回へ続く!みたいな感じでね。

そしてこの小説、本当に映画向きというか、映画っぽいなあと思いました。
描写がとても具体的で、イメージしやすいです。固有名詞が結構出てきますし。
ま、確かに絵画や彫刻などの作品は、見たことがなければイメージも出来ませんし、さすがに文字の情報だけで絵画を思い浮かべるのは難しいところもありますが。
それを補う意味で「ビジュアルガイド」なるものが山ほど出版されていますし、映画はそれこそ見えるようになるわけですから、人気が出るのも分かる気がします。

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