「13回の新月のある年に」 を見ました。 [映画:英数字など]
1978年 ドイツ=フランス
監督 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
様々な方面からリスペクトされているドイツの映画作家、だそうですが、自分はDVD-BOXが出るまであまり良く知りませんでした。
『マリア・ブラウンの結婚』はビデオで見て、面白いと思ったんですけどねぇ。
タイトルの『13回新月のある年』には、人々の内で抑鬱が強まる年だと言われているそうです。
20世紀にも何度かあったこの年のひとつ、1978年に製作され、映画の設定もこの年です。
主人公は元男性・・・恋人の男性のために手術して女性になったエルヴィラです。
この映画は彼女の人生最後の5日間の様子を描いたものです。
「男装」して男娼を買いに行くも、女性だとばれてボコボコにされてしまい、恋人は暴言を吐いて出て行く・・・などと、いきなりすごい不幸っぷりです。
友達の娼婦ツァラと共に、昔働いていた食肉処理工場、そして出生の秘密を知っている修道女の所などへ行きます。
この食肉処理工場で、エルヴィラは自分の人生がいかにさんざんだったか、という事を熱く語るのですが、ここで行われている「処理」の描写があまりにもグロすぎ・・・。
あまりの衝撃っぷりに、正直話している内容がよく分からない位でした。
ゲームセンターのような所で急に泣き出したり、なんとなくエルヴィラは行動がよく分かりません。
男性でもなく、女性でもない(女性にはありえない位大きくてゴツい・・・)という不安定な立場が、彼女の思考も不安定なものにしていたのかも知れません。
何というか救いのない映画ですよね。
恋人が出て行ってしまってから、エルヴィラは何にも寄りかかれない、本当に一人という存在になってしまったように思います。
行動を共にする人はいても、(元)家族はいても、彼女が本当に欲しいもの・・・「愛」ですかね、それはついに得られない・・・。
という、残酷な結末に、見た後はずっしりと重しが乗ったような感じになりました。
ファスビンダーは基本的に、このような「痛い」作品が多いとのことですが、これは特に、自分の親しい人が自殺をしてしまったことがきっかけで製作された作品なんだそうです。
監督自身の体験というか、内に向かう感じ・・・のようなものは、他の作品よりも顕著なのかも知れません。
他の作品も頑張って見てみようと思います。
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