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ニッポニアニッポン [本]

阿部和重 著 新潮文庫

最近読んだ『グランド・フィナーレ』にこの作品のことがチラッと書かれていたので、未読だった自分は慌てて読んでみました。
「芥川賞受賞」帯がまぶしいですね。口ひげがワイルド・・・。

故郷を追い出された主人公が、佐渡のトキ保護センターにいるトキを逃がすか、殺すか、それとも・・・と考えるところから物語は始まります。
『グランド・フィナーレ』は1人称で話が進みますが、こちらは3人称で書かれています。
3人称のどこか達観した語り口と主人公の無駄なほどの「熱さ」が良い感じで対比されていて、どことなく面白みを感じてしまいます。
本人はいたってマジメなのに何となく滑稽・・・これが面白いんですよね。
はじめはトキの解放と殺害のどちらを「最終解決」にしようか迷っていた主人公が、明確に「殺害」を決意するところなんて、笑っちゃうほどです。
「可哀想なトキと俺、だったのに可哀想な俺だけが残る」・・・う〜ん、逆恨みにもならないほどの逆恨み。

ホームページでの情報収集、ネットオークションによる武器の調達など、主人公はネットを駆使して「最終解決」の計画を実現に近づいていきます。
検索キーワードなどがかなり具体的に書かれていて、読みながら実際に検索したりするとさらに楽しめるかもな〜などと思います。
自分はいつも電車の中で読むので出来ませんでしたが・・・いずれ時間があったら試してみたいと思います。
asahi.comの記事などは描かれている当時から5年近く経っているから、もうないかも知れませんけどね。

クライマックスもまた、滑稽さが絶妙です。
主人公はついにトキ保護センターに侵入を果たしますが、ちょっとしたことがちょっとずつうまくいかないんですね。
この場面もちょっと笑いながら読んでしまった感じなんですが、「運がよければ・・・」のシーンはなんだか美しかったです。
そして、もうどっちでもいいや〜的な虚脱感が結構リアルで、思いつめていたことを実行に移した後って、何であれこんな感じかもなと思いました。

阿部氏といえば、先日某雑誌で後藤真希さんと対談をしていたのを読んだのですが、ほんと舞い上がってたんだな〜という感じがひしひし伝わってました。
なんつーか「(ゴマキの)あれも良い、これも良い」みたいな話ばかりで、いったい何をテーマにした対談だったのか・・・。
少々ひきつつも、ほほえましく?感じた次第でした。


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