一千一秒物語 --稲垣足穂コレクション1-- [本]
稲垣足穂 著 ちくま文庫
「稲垣足穂コレクション」として、全8巻の文庫版選集が刊行されていますが、これはその第1弾です。
彼の本はこれが初めてだったのですが、なんというか・・・ファンタジーですね。
特に表題作は、「お星様」「お月様」の書いてあるものが多く、絵本のようなドリーミーな感覚を呼び起こします。
それにしては急に『街灯のお月様を銃で撃った』などというハードな描写もあったりします。
この、ファンタジーとハードボイルドの両立といいますか、共存が面白いなあと思っていました。
最後に解説を読んで「ダンディズム」という言葉にあたり、やたらに納得しました。
たしかに、どこがとは言えないんですがダンディズムですねぇ〜。
面白かったのは、「〜〜の夜」という描写がとてもバラエティに富んでいることですね。
『全てのものがガラス箱に収まってシーンとしている夜』・・・なんて、すごい面白い組み合わせでロマンチックだなあと。
それと、お月様は実は三角・・・というくだりも衝撃というか、え〜こう来る?って感じでした。
お月様は本当は三角だけど、高速で回転しているからマルに見える。だけどお月様の通った後には細かい傷が出来ている・・・.
もう、どうやってこんな事を思い付けるのか不思議なくらいです。
少年愛をテーマにした作品も少しありました。
後に日本文学大賞を受賞する『少年愛の美学』への布石も、既にここからあるわけで。
この辺りの作品が大正時代の終わり頃に書かれていたということも衝撃です。
当時はどのような受け入れられ方をしていたのでしょうかね。
機会があったら他の作品にもチャレンジしてみたいです。
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