「太陽」 を見てきました。 [映画:タ行]
2005年 ロシア=イタリア=フランス=スイス
監督 アレクサンドル・ソクーロフ
日本で上映するのはタブーなのではないかと危惧されていたのか、銀座の古めの映画館でひっそりと公開されたこの作品。
蓋を開けてみると劇場始まって以来の大盛況、どんどん全国公開・・・!と、いろいろな意味で注目の的となっていますね。
わたしが見に行ったところも大混雑でした。
この映画は、イッセー尾形演じる昭和天皇が、第2次大戦の戦況が悪化する中、「人間宣言」を行う所までが描かれています。
あまり1日単位での出来事を覚えていないのですが、もう広島・長崎の悲劇の日は過ぎていて、戦争終結の日も迫っているという状況のようです。
地下深くの防空ごうのような場所で暮らしています。一人食事を取り、会議に出席、そして海洋生物学の研究・・・。
正直、話していることが時々抽象的すぎて良く分からない部分もあったり、何を考えているか分からない人だったのかなという感じだったのですが、意外にもちゃんと考えているというか、そんな感じがしました。
それにしてもイッセー氏の演じる天皇は自分の記憶にある昭和天皇像に、かなり近い気がしました。「あ、そう」ととぼけた感じとか、ユーモラスな感じがなんともいえず良かったです。
当然それほど明るいテーマではないのですが、チョコレートが送られてくるシーンとか、ちょっと笑える部分とかもありました。
話し方とか、妙なイントネーションだったんですが、あれって本当にそうだったんですかね〜?
外界の様子や具体的な戦況からも離され、「神」として暮らすことを余儀なくされている彼ですが、本当は周りの皆と全く変わらない「日本人」であることを知っている。
それを頑なに否定する侍従とか、少々痛々しいんですが、天皇は強引に自分の考えを押し切ることもなく、他の人達が決めた運命に逆らわずやっていくしかないと考えていたんでしょうかね。
もちろん悩むことも沢山あったのだと思いますが、きっと和を大事にする優しい人だったのだろうと思います。
外国の人が描く「昭和天皇」ってなんとなく悪い感じで描かれるというイメージがあったのですが、この映画はどちらかというと好意的だなという印象を受けました。
なんとなく愛情のある視点だと思います。
実は意外と何も起こらなく、本当に普通の日をたんたんと描いているようにも見えます。まあ当時としたら「人間宣言」はかなり重大な出来事だったろうとは思うのですが。
「降伏の日」まで進むのだろうかと期待して見ていたので、ちょっと急に終わり過ぎ〜という感じもしたのですが、ラストで「成し遂げた」と笑顔を見せる部分も、奥さんの皇后となんだかとぼけたやり取りをする部分も良かったですね。
あまり政治的な色合いもなく、本当に昭和天皇という「人物」にフォーカスを当てた作品になっています。
それがまあ、上映停止にもならず拡大上映・ロングヒットになった秘密かも知れませんね。
こんばんは。
これ、結構話題にはなっていたのですが、どういう映画なのか
よくわからなかったんです。トミュウさんの記事を読んで、よくわかりました。
昭和天皇も戦争に翻弄された人間の1人だったんだろうと思います。
外国人が描いたというところが、おもしろいですね。だからこそ、客観的に
見れたのかしら。今の皇室もほとんどベールにつつまれたままですものね。
外国の皇室のように、もっと人間くささがでてくれば、日本人の中での皇室
人気もあがるのでは、と思いました。うつ病になる人もでないでしょう。
by coco030705 (2006-09-04 21:57)
> ココさま
コメント&nice! ありがとうございます!
実はわたしも、あまり具体的な内容は知らないまま見に行ったんです。
もっと歴史的な出来事がいろいろ出てくるのかな?と思っていたんですが、そういう部分がほとんどなくて、本当に「昭和天皇」その人を描いた作品でした。
多分、日本人ではこういう風には作れなかったんだろうなと思います。
特に、戦争末期のころの「天皇」とか皇室周りって、なんとなくタブー視されている部分があるような気がします。
ココさんのおっしゃる通り、皇室やその周りの組織って、もう少しオープンになってもいいような気がしますね。
by トミュウ (2006-09-04 22:50)