凍える牙 [本]
乃南アサ 著
新潮文庫
以前時代推理モノを勧めてくれた父親が「これも面白い」と言っていた本です。
直木賞受賞作だったんですね、もちろん作者のことは知っていましたが、作品とかはあまりよく知らなかったですねぇ。
深夜のファミレスで突然「人体から発火する」という事件が発生します。
そこに第一報を聞いて駆けつけてきた中年の刑事滝沢、特別捜査本部に入った機捜隊の女刑事貴子がコンビを組んで捜査を実施することになります。
しかし、滝沢は「ここは女の職場じゃない」と言わんばかりの態度、対する貴子も「こういう男が最も好かない」と、初対面から反発し合う2人。
まぁここは、最終的にはある程度心を通わせるようになるんだろうな〜と思いつつ読んでいましたが。
火事の被害者の足に、すごく大型の犬に噛まれたような痕があるとことが判明し、それまで現場の聞き込みに回っていた貴子達はその犬の捜査を実施することになります。
そして知ったのが、オオカミと犬を掛け合わせた「ウルフドッグ」という動物のこと。
忠誠心が厚く、そしてものすごく賢く崇高な雰囲気さえ漂わせるウルフドッグに思いを馳せながら、その犬に喉元を食いちぎられるという被害者が続出し、捜査がどんどん大変になっていきます。
これの前にも似たような感じで、どんどん被害者は増えていくのに警察は全く手がかりを掴めず・・・という小説を読んでいたので、刑事という仕事も大変だなあなどと思いながら読んでいましたが、さすがに描写が具体的で頭の中で「絵」にしやすい。
こういうシンプルかつ的確な描写が、人気の出る小説には必要なんだろうなあと思ったりしました。
初めはどこがつながっているのか全然見えてこない被害者達が、少しずつ少しずつ近づいて、一つの輪のようにつながっていくのには感心しました。
貴子と滝沢も、徐々に少しですがお互いを尊重?するようになっていきますが、その部分があまり強調して描かれることもなく、意外にもさらっとしていたのは好感が持てました。
事件の謎解き的な部分にはそれほど驚くような部分はなかったんですが、まぁ「書かれなかったら分かる訳ないよな〜」って気持ちになったことは確かです。
でもさすがに直木賞で、クライマックスシーンの高揚感は良かったと思います。
また、全然知らなかったウルフドッグのことについてちょっと知ることができて、何となく知識が増えたような気がするのも良いところ・・・かな?
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