「ブラックブック」を見てきました。 [映画:ハ行]
2006年 オランダ=ドイツ=イギリス=ベルギー
監督 ポール・バーホーベン
ポール・バーホーベンといえば『ロゴコップ』や『トータル・リコール』の人、というイメージですが、今作は祖国のオランダに戻って撮影した作品です。
弟2次大戦中のオランダ、ナチスに占領されていた頃の話で、スピルバーグの『シンドラーのリスト』と比較されることが多いようなのもちょっとうなずける感じです。
いつかは撮らなければという使命感(かな?)と、この作品にかける監督の気合いの現れですかねぇ。
主人公は、レジスタンス活動に参加するユダヤ人女性ラヘル。家族を殺された彼女は、赤い髪をブロンドに染め、名前をエリスと変え、ドイツ軍にスパイとして潜入することになります。
ターゲットは諜報部の将校ムンツェ。彼は切手集めが趣味で、将校にしては優しく穏健派で、彼の優しさや孤独に触れていくうち、彼を好きになってしまうんですね。
ムンツェもエリスを愛するようになりますが、彼のことを良く思わない人物にはめられ、2人とも逃亡を余儀なくされます。
エリスがスパイであることがばれ、ムンツェを陥れようとする人物、彼らは本当に嫌な奴で、それでもその力には逆らうことはできない、という描き方には好感が持てました。
変に助けてあげたりするのではなく、不条理ともいえるようなことが実際には現実だったりすることもありますからね。
『ロボコップ』も、まぁ当時としては多少異色な感じのする映画だったのかもしれませんが、その監督がここまで〜?というところが多くて面白かったです。
いろいろな意味で「やり抜いた」という気がします。
エロあり、バイオレンスはもちろんあり、そしてグロもあり!女優さんも体当たりって感じでがんばっていましたね。
オランダからすると、当時のレジスタンスは正義の人達、ドイツ軍が悪という見方が多いのだろうと思いますが、この作品はそれだけじゃなくて、オランダ側の黒いところも冷静に描けているのがすごいですね。
オランダ人であるバーホーベン以外、これを描くことができる監督はいないかも知れません。
謎というか、展開がまた新たな展開を呼ぶという感じで、結局敵は誰なのかが本当に最後まで全然分からないんですね。
社会派的な映画は、感動させるだけのようなただ壮大なだけのような物を想像してしまいますが、この作品は「謎」の部分が最後まで効いていて、ちゃんと見て楽しめるものになっているところに感心しました。
ちゃんとエンターテイメントになっていて、2時間半近くの時間も全然気になりませんでした。
後でパンフレットを読んで、オランダでこれだけの映画が製作されたのが初めてだというのを知って、バーホーベン監督にはやはり自分が今、これを撮らねばという気持ちがあったような気がします。
ハリウッド映画で得てきたものをオランダの映画製作者達に伝えよう、という思いもあったんじゃないかと思っています。
↓こちらはノベライズ
こんばんは。なるほど、
>自分が今、これを撮らねばという気持ちがあったような気がします。
そうなのでしょうね。ハリウッドで成功を収めたので、祖国にそれを
還元したかったのかもですね。
それにしても、ハリウッド的なおもしろさと、ヨーロッパ映画の良さが
ミックスされていい出来上がりの作品になってました。
by coco030705 (2007-10-01 00:45)