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プラスティック・ソウル [本]

阿部和重 著 講談社

新作が出ると必ずチェックしたくなる作家の一人、阿部和重氏。
これは1998年から『批評空間』で連載されていた作品の単行本化ということで。
透明シートのカバーもゴージャスで、目を引きますね。

主人公アシダイチロウは、恋人?のヤマモトフジコとマンションに住んでいますが、作家志望と言いながら作品を完成させたことがない位集中力が持続しない性格のようです。
KだのSだの・・・とクスリ漬けでだらだらと暮らしていた彼が、10月25日にある仕事を依頼されます。
その仕事とは、自分と同じような作家の卵3人とチームを組んで、実在しない作家「オノダシンゴ」のゴーストライターになってくれ、ということでした。
作品を完成させたことすらない自分になぜこのような仕事が・・・?といぶかりながらも、他の3人と同様、仕事を受けることにしました。

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ミッキーマウスのプロレタリア宣言 [本]

平井玄 著 太田出版

なかなか興味深いタイトル、赤い表紙とページの橋のために全体が赤。という特徴あるルックスに惹かれて読んでみました。
各章のトビラに、印象的な写真が載っています。中でも第1章の写真は、著者平井氏の実家のクリーニング屋と、その隣にあった風俗店とそこで働く女性が写っています。
場所は新宿、1970年代前半。平井氏の青年時代の記憶から、この本は始まっています。

登場するのは俗に「フリーター」「日雇い」と呼ばれる人々です。
実家を出て、著者は出版社で校正などの仕事を得るようになります。共に働くのは、同じようにいつ「明日から来なくて良い」と呼ばれるか分からないの人たちばかりで、出版業界ってこういう感じなのか、というちょっとしたショックもありました。
そういう暮らしをしてみないと分からない、彼らの本当の生活とか考え方とか、そういうものも見えてきます。

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迷路の中で [本]

アラン・ロブ=グリエ 著 平岡篤頼  訳
講談社文芸文庫

「読んでいてもよく分からないから、ぜひ読んでみて」と勧められたこの本。
どんなに難しいのか・・・と息巻いて読んでみました。

最初に登場するのは「私」のいる部屋。
テーブルの上のホコリや壁紙の模様、はたまた照明の様子まで執拗なほどの描写が続いた後、窓の外に舞台が移ります。
そこには靴箱のような荷物を脇に抱えた兵士がひとり立っています。
人と会う約束をしているらしい彼ですが、道で少年と出会い、少年の家?のような所に行ったり、また外を歩き出したり、約束の相手を探してさまよいます。

とにかく最初の部屋の様子、あまりにも詳細な描写が多くて圧倒されました。
後に解説で「この作品の特徴」とも書かれていますが、同じ言い回しや単語が何度も出て来て、もう既に読んだところのような錯覚を覚え、更に混乱してしまいます。
なるほど『迷路の中で』とはこういうことか〜などと妙に納得してしまいました。

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オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える [本]

木村元彦 著 集英社インターナショナル

今年もJリーグが始まりました。
わたしの応援するジェフ千葉、今年もタイトル目指して躍進して欲しいものです。
さて、この本は2003年よりジェフ千葉の監督をしているイビツァ・オシム氏についての本です。
就任時から「オシム語録」など、含蓄のある言葉が話題になっているし、また2005シーズンについにジェフに初タイトルをもたらしたということで緊急出版という感じでしたね。

現役時代はFWだったというオシム氏、出身は旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナです。
1991年ごろからこちらでは内戦で大変な状況で、彼が監督していたユーゴスラビア代表は、92年のワールドカップの予選を突破していたにも関わらず、出場を取消されてしまいます。
内戦のため、家族と2年半も会えなかったとか、日本にいる分にはあまりリアルではなかったことを本当に体験していた人がいる・・・この内戦についてもあまり詳しいことを知らなかったので、すごいショックでした。

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小説の自由 [本]

保坂和志 著 新潮社

現役の作家でかなり好きな方に入る保坂氏の「小説論」ということで、かなり期待して読みました。
雑誌「新潮」の連載をまとめたもので、全13章から成り立っています。

考えていることがそのまま書かれているような、流れるように進む特徴はそのままに、ときには辛辣な批判も交え、小説を書く思考について論じていきます。
小説論という呼び方は間違えているかも知れませんね・・・。普通このテの本というのは「どのように書くと『良い文章』になるか」が書かれているような期待をしてしまいますが、これはそんな小手先の技術ではないんですね。
もっと小説を小説たらしめる力というか、保坂氏は「音楽」と呼んだりするけれど、それはどういう思考から生み出されるか、それが現れている文章はどういったものか、そういうところに重心が置かれています。

川端康成やカフカをはじめたくさんの小説が引用されていますが、もちろんここでもテクニック的なことではなく、文章のリズムとかパワーとか、そういったところを解読してくれます。
自分のようなシロウトにはなかなか感じれないところもあるのですが、その中で「小説を読むパターンには2つある」というところが興味深かったですね。
2つのパターンとは、
・読むときに頭の中で映像を出力しながら読む
・映像を出力せず、文字のイメージで読む
という2つなんですが、例文をあげて「こっちの方が早く読める人は映像出力型」なんていうテストができて面白かったです。

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萌えの研究 [本]

大泉実成 著 講談社

「萌え〜〜」・・・って、どのくらいメジャーな単語になったのでしょうね。
なんとなく雰囲気はわかるけど、結局のところどういう感情をさすのだろう。
といった疑問に立ち向かうべく、ノンフィクションライターの著者が「萌え」の世界に突入して行きます。

第1章のライトノベル篇に始まり、第2章のテーブルトークRPG篇〜美少女ゲーム篇〜マンガ篇へと進んで行きます。
はじめは本を放り出しそうになったりしている大泉氏ですが、そこに面白さを見いだして行く過程が描かれていくんですね。
出てくる作品は本もゲームも、見たことがあるものが一つもありませんでしたが、脚注が「オタク度0%」の人にも分かるように書かれていたり、端的な紹介が分かりやすく,どんどん読み進んで行けました。
テーブルトークRPG、不勉強で全く知らなかったのですが、あらかじめ決められたシナリオに沿ってストーリーが進むゲームRPGと違い、参加メンバーのアイディアによってその場その場で変化して行く・・・という進め方が面白いと思いました。
実際やるとなると、結構大変&恥ずかしそうですけどねぇ。

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ダロウェイ夫人 [本]

ヴァージニア・ウルフ 著 角川文庫

20世紀を代表するイギリス女性作家、ヴァージニア・ウルフの作品ではもっとも良く知られた作品ではないかと思います。
ストーリーは、ロンドンに住む議員の妻、クラリッサ・ダロウェイが、夜に開くパーティーの準備をしているところから始まります。

クラリッサが準備をしていると,彼女の昔の人ピーターが突然インドから帰って来て、彼女に会いに来ます。
昔のことを話しながら、2人はいろいろな事を心に思い浮かべます。
彼女の家を出たピーターも、公園を歩きながら、さまざまなことを考えはじめます・・・。

群像劇といった感じなんでしょうかね〜。
主人公はクラリッサですが、どんどん思考の主が変わって行きます。
ピーターはもちろん、メイドや娘に至るまで・・・。
さすが「意識の流れ」の手法の完成形と言われるだけのことはあります。
実際、自分が生活しているときにも、歩きながらとか電車の中でなど、なんだかんだいろいろ考えたりしてますもんね。

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日々の泡 [本]

宮崎誉子 著  河出書房

販売の仕事をしている人たちを主人公にした5つの短編が入っています。
登場するのは靴屋さん、本屋さん、コーヒーショップなど・・・。
主人公は時給いくらで働いている販売員たちです。
よく分からない上司に、理不尽なことで怒られまくり、ちょっと迷惑なお客さん達と相対しながら、懸命にお仕事しています。

いや〜自分も本屋さんでバイトしたことありますし、なんかすごいシンクロしちゃいましたね。
幸運にもわたしは一緒に働いた人たちに恵まれ、理不尽に怒られたりしたことなかったですが・・・。そういう職場、多そうですよね。
主人公は歩き方、お客さんとの接し方、ほかもろもろに関して上の人に口うるさく言われます。
昨日言われた通りにしたら、今日になったら「違う」と言われたり。上司がやった通りにしたら「自分で決めるな」と怒られたり。
そんな逆境にも負けず、休憩時間や家に帰ったひとときに少しの楽しみでエネルギーをチャージ!して頑張る姿、応援してしまいます。
極端な例かも知れないとはいえ、こういう風に毎日お仕事している人ってとっても多いだろうなあと思います。

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挟み撃ち [本]

後藤明生 著 講談社文芸文庫

ある夕方、主人公が国電お茶の水駅前の橋の上に立っている。
20年前にこの橋に立ち、大学試験「早起き鳥試験」試験を受けに行ったことを思い出し、その時着ていた外套のことを思い出す。
外套の行方を探しに、その時下宿をしていた蕨に向かう事にした主人公。

とまあ概要はこんな感じなのですが、流れるような話の展開に、話題が移っていることにすら気付かないくらいです。
豊富な日・ロシア文学の知識から、ゴーゴリ、永井荷風などの著書を引用し、いろいろなことへと思いを巡らせていきます。
それは、「早起き鳥」をはじめ、下宿屋の兄弟、両親のことから自分が生まれた朝鮮(戦時中だったので、当時はまだ「日本」でした)での出来事・・・。
将校に憧れ、幼年学校に入学することを夢見ていたことなど、現在と記憶との境目もなく進んで行くんですね。

そんなことを考えながら、自身は外套の行方を巡り、当時の下宿、友人が勤めている銀行など蕨〜上野〜亀戸へと足を進めて行きます。
ふとしたきっかけで昔の友人や考えていたことなどを思い出したりして、思考ってこういうものだよなあと妙に納得しました。
特に「このこと考えよう」と思ったりするわけではなく、どんどん流れて行くんですよね。

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CDは株券ではない [本]

菊地成孔 著 ぴあ

タワーレコードのサイトbounce.comで2年に渡り連載された、大人気コラムの書籍化です。
いやもうこれ本当に楽しくて、毎月いそいそと拝見しておりました。

内容は、ジャズミュージシャンであり東大非常勤講師であり、文筆家でもある菊地氏が、毎月3枚の邦楽CDを聴き、1ヶ月の売上枚数を予測するというものです。
わたしも邦楽はほっとんど聴かないので、今人気のあるのはどんな人たち?彼らを菊地氏はどのように分析?というのを楽しんで読みました。

「ヤング係長」H氏が選ぶCD3枚を聴き、それについてコメント&売り上げ枚数の予測をするわけですが、ほんと面白いんですよねぇ。
長渕剛『金色のライオン』の回、「うひょー、筋肉ー!シャーララララ!」なんて妙にテンション高かったり、「(以下、コピペしてください)ダリックな・・・」なんて、笑えるところ満載です。
とはいえ、ただ面白おかしく書いているだけではありません。
毎回譜面に起こし、10回以上聴いてから書いているということですし、曲や歌詞に対する分析にはちゃんとした裏付けあってのことです。
ま、自分は紹介されている曲のほとんどを聴いたことがないため「そうそう、そうだよね!」などと納得するような部分はあまりないのですが・・・。
個人的には本文に入る前のH氏とのムダ話的やりとりが本当に面白いので、そこも余さず載せてくれればな〜なんて思いましたが。
本の厚さが倍になっても、頑張って読んじゃいましたよ。

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